コラム

一年を振り返って

さて、本年も残す所、あと僅かとなりました。
皆様は2020年を振り返られてみて、どの様な一年でしたでしょうか。

おそらく、異口同音に「コロナに明けコロナに暮れた」というご返答を頂く様に想像致します。
しかしながら、文明の進化により、あらゆる物事を遠隔で行える様になった21世紀の時代に、新型コロナウイルス感染症が流行したという事だけが、せめてもの救いであったと言えるかもしれません。もし、この様なパンデミックが30年前に起こっていたとしたら、間違いなく私達はコロナと共存する上で、生活を営む術を見出せなかったでしょうし、世界中がカオスの状態になっていたであろうと思われます。

ただ、常にパソコンの前に座って、液晶の画面越しに会話をしておりますと、(実際に会い)対面で行うコミュニケーションの大切さ、そして仕事やプライベートを問わず、人々との交流や、温かみを感じられるちょっとしたふれあいというものが、どれほど重要であり、暮しには不可欠であったかという事を思い知りました。

また、クラシック音楽に携わる者にとり、ライブのコンサートを好んで聴きたいと願って下さる方々へ、どの様にして演奏をお届けしたら良いのか…。この難題に対する解決策が、未だ得られておりません。
YouTubeという優れた手段はありますが、率直に申し上げれば、「本物の音」をダイレクトに伝える事は叶いませんし、或る意味で限界があります。
そもそもコンサートというのは、小さな部屋の様なサロンから大きい公共のホールまで、奏者に与えられたひとときと空間を、お越し下さる方々と共有させて頂いた上で、聴衆の皆様と一緒になって創り上げる芸術のひとつの形です。
あと数年の間は、コロナとの共生が続く事が想定されますが、感染拡大の防止策を講じながら、多くの方々にご提供できる様な新しいパフォーマンスの在り方というものを、演奏家は模索してゆかなければならないでしょう。
一方で、コロナ・ワクチン接種による効果が期待されている様に、これから日本のみならず世界各国において集団免疫が形成され、再び平穏な日常が戻る事を祈りつつ、もう少し楽観的に考えてみたいとも思っております。

本年も、ウェブサイトでは、皆様より沢山の温かいメッセージを頂戴しまして、心より有難うございました。
来る年は、科学の大きな力で現状が打破され、人々のコロナとの共存生活にピリオドを打つべく、新しい希望の光が見出される事を切に願っております。

塩見 貴子

2020.12.31 23:35

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