コラム

“本物”に触れる至福の喜びとは

「星の王子様」の著者のサン=テグジュペリではありませんが、本当に大切なものは人間の眼に見えない所に存在しているとしても、しかしながら、多くの美というものは、歴史の中に実際に見える形として残されている様です。
ただ、審美眼の有無に関わらず、あらゆる良い物とそうでない物を見分ける力を持つ必要がある事は確かですね。
そのためには、常日頃から本物に出来るだけ触れられる様な環境に身を置く事が、重要になってくるのではないでしょうか。

真の美しさを間近で見る折には、何か言葉では表現し難い、魂のいわば至福の喜びの様なものを感じる事があります。
例えば、十代の若い学生の頃にルーブル美術館で神秘的なモナリザの絵を初めて鑑賞した感動は、今もなお褪せる事がありません。
また、ヨーロッパで数々の生家や記念館を訪れ、偉大な作曲家の自筆譜に触れる機会を頂いて、聴こえないはずの音楽が自身の想像の中で聴こえてきたり、また文学作家の自筆によって書かれた文字に表れた筆圧を見て、未だまるでこの世に生きているかの様にリアルな、彼らの作品に捧げる情熱、また生への痛みを感じるという様な貴重な体験をしました。
作品に込められたクリエーターの血や肉と言ったものが、やはり真の芸術を生み出しているのだという事を目の当たりにしました。

幸運にも、近年では、日本においてその喜びを感じられる体験を多くしています。
観劇した歌舞伎のお芝居の中での、市川海老蔵さんによる洗練された“荒事”、そして医学の歴史展で触れた、墨と筆で丹念に記されている、人々の救済に大きく貢献した、原書による杉田玄白の「解体新書」や貝原益軒の「養生訓」、また新国立美術館の世界的画家の草間彌生さんの展覧会では、圧倒的存在感を放つ、生涯彼女の人生を支配するであろう“ドット(水玉)”の世界に、眼も心も奪われた事が印象に残っています。

音楽は、あまたの音の集積にも関わらず、泡の様に消え去ってしまう刹那的な芸術ですが、やはり名演の感動は、聴いた人の心に一生とどまり続けるものではないでしょうか。

そんな、真のアートに出会える「川棚・コルトー音楽祭」開催のシーズンが、本年も到来致しました。
この度は、一昨年前にも情熱的な演奏で聴衆を魅了したヴァイオリニストのオリヴィエ・シャルリエさんと、ベテランピアニストのピエール・レアクさんによるデュオの公演です。
今では、かのピアニスト、マルタ・アルゲリッチ女史も、コルトーと厚島(弧留島)の縁について知られ、ご関心を寄せて下さっているとの事。
いつの日か、川棚にお立ち寄り頂ける様な日が実現したら、さぞ素晴らしい事でしょう…!
山口県内にお住まいの方は勿論ですが、県外の方々も是非一度、いにしえのひとときに思いを馳せられる稀有の空間、コルトーホールへ足を運ばれてみて下さい。

「第8回 川棚・コルトー音楽祭 京都フランスアカデミー特別演奏会」
開催日時:2017年4月3日(月) 19時15分開演(18時45分開場)
場所:川棚の杜・コルトーホール
出演:オリヴィエ・シャルリエ( ヴァイオリン),  ピエール・レアク(ピアノ)
プログラム:シューベルト「ヴァイオリンとピアノのためのソナチネ第1番 ニ長調 D.384 作品137-1」
       ブラームス「ヴァイオリン・ソナタ第3番 ニ短調 作品108」
       フランク「ヴァイオリン・ソナタ イ長調」
入場料:全席自由 一般3500円 高校生以下1500円(当日各500円増し, 未就学児入場不可)
お問い合わせ:川棚の杜・コルトーホール Tel 083-772-0296
後援:下関市, 下関市教育委員会, 日本ショパン協会, 豊浦町観光協会, 川棚温泉観光協会, 朝日新聞社, 毎日新聞社, 読売新聞西部本社, 山口新聞社
主催:コルトー音楽祭実行委員会, 川棚温泉まちづくり株式会社
       






2017.03.19 23:05

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