コラム

新型コロナ感染症がもたらしたものとは何であったのか

さて、本年も残す所、僅かとなりました。
皆様にとりまして、2023年はどの様な一年でしたでしょうか。
年の暮れにも関わらず、仕事の関係で慌ただしく過ごしており、気が付いたらもう大晦日を迎えていた… という様になってしまいました。
(長期休暇を大切にし、365日の暮らしに緩急のめりはりをつける事に長けているフランスの友人から、「もっと人間らしい生活を送りなさい!」とお叱りを受けそうです…。)

振り返りますと、新型コロナ感染症が2類から5類に引き下げられ、ウイルスも弱毒化してきた中で、ようやく人々が、完全ではないまでも以前の様な生活を取り戻す事ができたと言える年ではなかったかと思います。

音楽に携わる者としましては、コンサートが通常の形式で再開される様になり、コロナ前にはさほど意識されていなかったかもしれませんが、改めて同じひとつの空間で聴衆と奏者が「今ここで奏でられた音」を、パソコンやスマホ等を媒介せず共有できる喜びや、その価値というものを見出せた一年ではなかったかと考えております。
また、コロナ禍においては、コンサート会場で声を出すのを極力慎む事が求められていましたが、プログラムの最後の音が鳴り響いた後に、聴衆の一人としてブラボーの歓声を贈ったり、また奏者の側として頂けたりする、ライブならではの感動の表現というものが戻ってきたのは、心から幸いであると個人的には感じました。

ただ、コロナウイルスはこの世から消え去った訳ではなく、依然として人の体内で生存を続けるべく、変異を続けています。
人類の歴史は感染症との闘いと言われますが、人と同様にウイルスの本質も、おそらく永遠に変わる事はないでしょうから、喉元過ぎれば熱さを忘れる、ではないですが、「コロナって何だったのかしら?」とは、決してならない様にしなければいけません。
未来には、再び新興再興感染症が出現するかもしれず、そうした有事に備えた暮しというものを、是非とも意識して心掛けてゆきたいものです。

本年も、多くの読者の方々より、温かい応援や励ましのメッセージを頂き、誠に有難うございました。
来る年が、皆様にとり、穏やかで平和な一年となります様、心より祈念致します。

塩見 貴子

2023.12.31 23:55

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